三笠会館ものがたり
EPISODE
16
「未来へ繋ぐ三笠のバトン」

三笠会館本店
原点の再生
辰哉の挑戦は、今もなお続いている。
激動の時代にあって、辰哉が大切にしているのは「変化への対応」と「原点への回帰」の両立である 。
そのひとつが、創業時の氷水屋を現代に蘇らせた「氷処みかさ」だ。
かつての質素な氷水とは異なり、フランス料理や日本料理の料理長たちが、厳選したフルーツや抹茶で贅沢なソースを仕立てた。 さらに、お客様に体験そのものを楽しんでもらおうと、自らお茶を煎れて味わう仕立てを取りれた。
このように、さまざまな試みが広がっていく。

本店3階 吉野の「氷処みかさ」
季節に合わせたさまざまな味をお楽しみいただけます

多業態の共演
辰哉は、従業員からの提案も積極的に取り入れた。
長年にわたってご縁のあるイタリアのワイナリーオーナーの来日に合わせ、特別なワインディナーが企画された。 辰哉は「イベントのお料理は、多業態を活かしたらどうでしょうか」という発案に乗った。
イタリア料理だけでなく、フランス料理、日本料理、中国料理、洋食といったさまざまなジャンルの料理を一つのコースとしてお出しするという試みが行われた。各店舗の料理長たち、この挑戦に試行錯誤しながらも、新しい経験を楽しみ、見事な共演を果たした。
このイベントは、お客様だけでなく、イタリアのワイナリーの方たちも大喜びだった。
「三笠会館だからこそ、この特別なディナーが実現できた」
達成感に満ちた料理長やスタッフたちの笑顔を、辰哉は誇らしく見つめていた 。

100周年記念ワインディナーの様子


三笠会館オリジナルの
100周年記念ワインも提供いたしました
気づけば100周年
2025(令和7)年、三笠会館はついに創業100周年を迎えた。
お客様、御取引先、同業者をはじめご縁のある方たちから 「100年企業ですね。おめでとうございます」とお祝の言葉をいただいた。
辰哉の中にあったのは「気づけば100年が経っていた」という淡々とした、しかし深い感謝の念だった。
曾祖父の善之丞、曾祖母の友野、そして父の善樹からバトンを受取って、約13年。
ただ一日一日を積み重ねてきた結果に過ぎないからだ 。 しかし、この積み重ねのおかげで、100年というひとつの節目を迎えたという結果につながった。
辰哉は、この100年の節目にどうしてもやりたいことがあった。
創業の月である6月に、全従業員を集めたパーティーを開くことだ。
従業員と共に成長してきたことを喜び合い、感謝し合い、100周年を一緒に祝おう。 パーティーには大勢の従業員が参加してくれた。
「親が、大学の講義より、記念のパーティーに参加した方がいいと言ってくれたので、授業は休んできました」 「特別なパーティーなので、オシャレしてきました」
「夢のような時間です。ありがとうございます」
集まった従業員たちの楽しそうな笑顔と、触れ合うグラスの音。共に歩んできた仲間たちと喜びを分かち合う時間は、まさに夢のようなひとときとなった 。 新規事業も始まった。
しかし、これらの新たな挑戦は、100周年だから行ったのではなく、実行できた時が、偶然100周年を迎えた年だった。
辰哉は 「100周年を迎えられたことは有難いが、100年がゴールではない。 次の100年へと続くスタートだ」 と、冷静に、そして力強く、従業員に伝えた。

100周年記念パーティーの様子
洋食を世界へ 初めての海外出店
初めての海外出店も、100周年である2025(令和)7年3月だった。
多くの方たちのご協力をいただき、ホーチミンに 「MIKASA JAPANESE YOSHOKU RESTAURANT」をオープンした。
日本は西洋や中国から伝わった食文化で、生活に新しい選択肢が入り豊かになった。 今度は、日本で独自に育ち、日本人の暮らしに根差した「洋食」という文化をアジアへ、世界へと届けていく挑戦である 。 生活スタイルも言葉も違う外国での仕事は大変だが、若く、活力あるベトナムにエネルギーをもらい、ベトナム人の笑顔と優しさに癒される。
お互いに支え合って、新しい食文化が生まれる。 辰哉の喜びは大きかった。

2025年 ベトナム・ホーチミンにオープンした
「MIKASA JAPANESE YOSHOKU RESTAURANT」
初のM&A
辰哉は「世の中は早いスピードで変わっていく。自分たちの変化だけでなく、新しい要素も取り入れた方がいい」と考えていた。
今までも、いくつかのM&Aの提案をいただいたが、タイミングが合わなかったり、問題が出てきたり等、実現には至らなかった。しかし、チャンスは必ずくるものである。
2025(令和7)年、三笠会館にとって初のM&Aを実現することができた。
先方の店にとっても、三笠会館にとっても成長の機会になることを確信した。辰哉は、最初の挨拶で「どちらが上とか下とかではなく、お互いに成長していきましょう」と声をかけ、対等なパートナーシップであることを伝えた。
M&Aで新しく仲間になった会社では、辰哉自身は代表取締役会長となり、取締役社長は別の者を任命した。自分が社長になって経験したことは大変なことも多かったが、得難い時間でもあった。この経験を他の者にもしてもらいたい。
創業者夫妻、善樹も、人を育てることを大切にしてきた。辰哉も、同じように大切に思っているが、教えるより、任せる。その環境をつくることも大事だと辰哉は考えていた。
ルネッサンスの精神
「再生」「復活」を意味するルネッサンス。 三笠会館が歩んできた本質を再評価し、現代、そして未来へと活かしていく。 辰哉は決意を新たにした。 6年の歳月をかけてできた100周年記念のオリジナルワインでスタッフたちと乾杯し、辰哉は未来を描き続ける。
これから先、世の中はますます変わっていく。どうなるかわからない。 不透明な時代だからこそ、未来は自由に想像できる。創造できる。 多くの先人たちが培ってきた『三笠会館』のバトンは、今、辰哉の手にしっかりと握られている。このバトンを持って、皆と共に一歩一歩と進んでいく。
次の新しい100年に向かって、三笠会館の物語は続いていく 。
完
